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夏の登山やトレッキングで注意したい「虫さされ」


野外は野生の生物の生活圏。そこに足を踏み入れる登山やトレッキングは、ふだんの生活とは異なる注意が必要です。四季折々の景色を楽しみ、心身ともにリフレッシュできる魅力がありますが、夏の季節に気をつけたいのが、蚊やハチ、アブなどや虫さされによる皮膚トラブル。楽しい登山やトレッキングの想い出が台なしにならないよう、注意すべき虫さされの予防と対処についてご紹介します。

年齢問わず人気!増える登山愛好家
登山では鳥や虫、動物など野生の生き物と遭遇することも近年、誰もが手軽に楽しめるレジャーとして、登山やトレッキングを始める人が増えています。「レジャー白書」(日本生産性本部)によると、2014年の登山人口は860万人で、年代を問わず多くの人が登山を経験していると報告されています。2016年から国民の祝日として「山の日」(8月11日)が制定されたことも、登山ブームに一層、拍車をかけることになりそうです。

ただし、忘れてはならないのが山での体調不良やトラブル。山は、野生の生き物たちが生息するフィールドでもあり、見た目の美しさとは裏腹にさまざまなトラブルや危険が潜む可能性があります。実際に、登山者の増加を反映して年々、山でのトラブル発生件数が増加傾向にあります。

なかでも多くの人が経験しやすいのが、ハチや吸血昆虫による虫刺され(「夏休みのキャンプ、虫さされ対策にぬかりなし!」)。せっかくの楽しいレジャーが思わぬトラブルで台なしにならないよう、万全の対策で出かけるようにしましょう。
虫さされ予防!登山に出かける前の準備
野外に出かけるときは、虫にさされることを想定し、できるだけ害虫を近づけないようにするとともに、万が一刺されたときは素早い応急手当を行う必要があります。

ドラッグストアや薬局、アウトドアショップ、ホームセンターなどでは、さまざまな虫よけ用品や応急手当用品が市販されています。登山の計画を立てたら、まずは必要なものを買いそろえ、忘れずに持って行くようにしましょう。

虫よけ用品としては虫よけ薬や虫よけバンド、携帯用蚊取り線香が有効で、虫に刺されたときの応急手当用品には、虫さされ薬、ポイズン・リムーバー(毒針・毒液吸引器)などを準備しておくと安心です。

●虫よけ用品
虫よけ薬…肌の露出している部位や衣類の袖口などに塗って蚊やアブなどの害虫を寄せ付けないようにする。スプレー、ウエットティッシュ、シールタイプなどがある。

虫よけバンド…虫が嫌う成分を練りこんだバンド。手首や足首、ベルトやバッグなどに巻きつけておくと、虫がよりつかない効果がある

携帯用蚊取り線香・電子虫よけ器(電池式)…家庭で使用する蚊取り線香や虫よけ器の携行タイプ。ズボンのベルトにつり下げたり、足や手首に巻きつけて使用するタイプがある。

●虫に刺されたときの応急手当用品
虫さされ薬…軟膏、液体、スプレー、シールなどさまざまなタイプの薬が市販されている。成分にステロイドを含むものは、皮膚の炎症やアレルギー反応を抑える作用がある。

ポイズン・リムーバー(毒針・毒液吸引器)…ハチや毒ヘビなどに刺されたとき、傷口から毒液や毒針を抽出するための携帯用吸引器。医師の手当てを受けるまでの応急処置として使用する。
登山やトレッキングで被害の多いハチへの対処法
オオスズメバチ 野外に生息する生物の中でも、とくに注意が必要なのがハチの仲間。とくにスズメバチは攻撃性も強く、刺されると危険な状態に陥ることもあり注意が必要です。国内では例年、20名前後がハチに刺されて死亡しています。

ハチさされの防止で肝心なのは、ハチの巣に近寄らないこと。スズメバチは「カチカチ」という警戒音を立てるため、耳にしたらすみやかに退避しましょう。そして、スズメバチが上下の動きを苦手とする習性を利用し、体を低くしてやり過ごします。手で追い払うしぐさは、かえってハチの攻撃性を増すため危険です。

また、ハチは黒い色に反応するため、登山時には帽子で毛髪を隠し、黒い衣類を避けましょう。甘い匂いにも反応するため、香水や整髪料は控えるのが無難です。

刺されたときは、ハチの毒は水に溶けやすいため、すぐに患部を流水で洗い流します。毒液を指で絞り出すか、傷口に抗ヒスタミン薬やステロイド外用剤を塗って手当します。

過去に刺された経験のある人はハチ毒に対するアナフィラキシーショックを引き起こす可能性があるため、嘔吐や発熱、呼吸障害などの兆候が出たら一刻も早く病院に運んで下さい。
山や森で注意!吸血する昆虫への対処法
虫にさされないよう、虫よけ用品を準備したり、皮膚が露出しないように気をつけよう 野外には蚊やヌカカ、アブなど、人が発する二酸化炭素に反応して血を吸う虫が潜んでおり、山の中ではとくに、沢や渓流が生息場所として注意が必要です。虫に刺されないためには、虫よけ用品を活用しながら、皮膚が露出しない衣類を着用しましょう。

蚊に刺された場合、かゆみや発赤が生じ、体質によっては数日後にぶり返す場合もあります。また、ヌカカは体長1~2ミリ程度の小さな虫で、水辺に集団で生息し、うっかり近寄ることで大量に刺される恐れがあります。刺された直後は感覚がありませんが、翌日以降に腫れとかゆみが生じ、1週間ほど続くこともあります。アブは刺された瞬間に激しい痛みと出血を生じるのが特徴で、やがて患部が赤く腫れてかゆみが激しくなり、2~3週間続くこともあります。

いずれも、応急処置としては炎症を抑えるステロイド外用剤を患部に塗り、汚れた指でかかないことが大切です。ヌカカやアブなどはかゆみが長引きやすいため、かきこわしによる細菌増殖を防ぐためにも、抗生物質の配合されたステロイド外用剤を使用することをおススメします。薬局では、化膿した部位にも使える抗生物質配合のステロイド外用剤が購入できるため、アウトドアの常備薬としてつねに携行すると安心です。

野外に生息する生物への対策を講じることは、野外環境について深く知り、より登山に親しめるきっかけともなります。登山での虫さされ対策を万全に行い、自然の魅力を思う存分楽しんで下さい。

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